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静岡地方裁判所 昭和43年(わ)275号 判決

主文

被告人を禁錮一〇月に処する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は

第一、自動車運転の業務に従事しているものであるが、昭和四二年一〇月二七日午後九時五五分ごろ、普通貨物自動車(静岡四ね二八九〇号)を運転し、静岡市中町方面より同市弥勒方面に向かい時速約四〇キロで進行し、同市本通り八丁目二の一二地先にさしかかつた際、同日午後七時ごろ清酒約三合を飲んでいたため、酔がまわり前方を十分注視して運転することができず、かつ急制動の措置を適確にすることができない状態になつたがこのような場合自動車運転者としては、一旦運転を中止して休息する等し、酒気の解消を待つてから、再び運転を開始し、もつて事故の発生を未然に防止すべき業務上の注意義務があるのにかかわらず、これを怠り、そのまま運転を継続して進行した過失により、進路前方を同一方面へ向け進行中の松永陽子(当四二年)乗車の自転車を発見することができず、自車の前部を右自転車の後部に追突させて、同人を前方にはね飛ばし、よつて同人をして、同日午後一一時三〇分、同市北番町二三番地静岡厚生病院において、頭蓋骨々折、頭蓋内出血により死亡するに至らしめ、

第二、呼気一リツトルにつき、〇・五〇ミリグラム以上のアルコールを身体に保有し、その影響により正常な運転ができないおそれがある状態で、前記第一の日時場所において前記普通貨物自動車を運転し、

たものである。

(証拠の標目)(省略)

(法令の適用)

被告人の判示所為中、第一の事実は犯行時には改正前の刑法第二一一条前段罰金等臨時措置法第二条第三条に、裁判時には改正後の右法条に該当するが、刑の変更があるから刑法第六条第一〇条により軽い改正前の前記法条により所定刑中禁錮刑を選択し、第二の事実は道路交通法第六五条、第一一七条の二第一号同法施行令第二六条の二に該当するので所定刑中懲役刑を選択し、以上は刑法第四五条前段の併合罪であるから同法第四七条本文但書第一〇条により重い業務上過失致死罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内で被告人を主文の刑に量定処断する。

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